北方水滸伝10巻感想
10巻は濁流の章の名に相応しい苦い闘いが凝縮されています。
これまで連戦連勝で官軍に勝ち進んできた梁山泊が戦うことになったのは、地方軍の名将、呼延灼。
あれ?この人は……と思いつつ、前半は淡々と呼延灼が戦支度をする様子が描かれていきます。
これまで楊志や秦明といった官軍の将を勧誘するのに成功してきた梁山泊ですが、仲間にしたい好漢と真正面からぶつからなければならなくなってしまったのは、おそらくこれが初めてでは。
そしてあっという間に開戦。梁山泊の目と鼻の先で、複雑な思いを交えた男達が激突す!!!
「一度だけ勝て」との司令を受けている呼延灼は、後先を気にする事なく、いきなり秘策の連環馬を炸裂させて、梁山泊を追い込みます。
でも大☆丈☆夫!敵の阿呆な将軍が無謀な再戦を仕掛けてきてくれたから!
返り討ちにして、無事呼延灼とその部下をゲットだぜ!
サンキュー高球。ドンマイ呼延灼。
最悪の敵が敵陣ではなく味方に居るなんて状況はどうしようもないので、官軍辞めちゃって正解だったと思うよ。
と、ここでひとつ疑問が。
呉用も連環馬に驚いていいましたが、連環馬の存在を知らなかったのでしょうか。
ちょっと調べても連環馬は呼延灼の代名詞みたいなところがあるっぽいし、呼延灼がよっぽど上手に使ったという展開なのでしょうが、宋はたしか三国志とかよりもすっと後の時代のはずなので知っててもおかしくないような気もするんですよね。
連環馬自体が馬を犠牲にする通常好ましくない戦術なので、あんまりポピュラーではなかったという事なのかもしれませんが〜。
これまでも北の隣国「遼」より馬を買い入れる描写などが度々挟まれていたので、北方では馬を使った作戦が重要だったというのは察する事が出来るし、梁山泊がそれにやられちゃったって事なんでしょうか。
この難問連環馬を破るための対策として、別ルートで寝返らせた仲間が鍵となったというのも、これまでにない新しい流れで面白かったです。
あと前巻から、盧俊義から離れた燕青がいい味を出してます。李逵と仲良しで微笑ましい。
ふたりともクソ強いけど純粋なところがあるので、通じ合ってるのかな。