雑記

法と混沌

戦乱巻き起こる幻想水滸伝の世界(以下、紋章世界)。その裏には「法と混沌」の二大勢力の争いが存在しています。
この設定はマイクル・ムアコック作「エターナルチャンピオン(以下、エタチャ)」シリーズから影響を受けて作られたものであると明言されています。
今回はそのエタチャを読んで、幻想水滸伝における「法と混沌」について感じた事を自分なりの考察のもと、頭の中を整理するためにアウトプットしていこうと思います。

※まだエタチャを読破していない段階の無責任な走り書きです
※今後考えが変わる可能性もあります
※長いです
以上をご了承の上、こんな考えもあるんだなーくらいの感覚でお楽しみください↓

1)紋章世界における、二大勢力の対立

某ゲーム雑誌のインタビューにて、ユーバーとペシュメルガ、レックナートとウィンディ、ルックとササライ達の対立構図は、物語の裏にある二大勢力のためだと言われている。的な事が書いてあるそうです。
それってこういう事かなーと思いました。

a)複数の真の紋章が惹かれ合って集まる

b)混沌と秩序のふたつの勢力がぶつかる戦場が生まれる
1:混沌=主人公、秩序=帝国
2:混沌=主人公、秩序=王国
3:混沌=破壊者、秩序=主人公

 (帝国・王国はハルモニアから独立した国。3主人公陣営はササライが味方なのと、五行が秩序?
→ハルモニアと繋がっている方が秩序の陣営になるっぽい?)

c)二大勢力の争いに参加した、よく似た二人が争い合う。
ササライ=ハルモニア=秩序、のような場合は、もう一方のルックは混沌につくことになる、とか。
ユーバーは自分の利益になる陣営にその時々でついているので、トリックスターの意味合いが強そう。

つまり対立する二人の紋章の属性が混沌と秩序に分かれているのではなく、戦場に生まれた陣営が混沌と秩序に分かれていて、その影響を受けて敵同士に分かれて戦ってしまうのではないか?と感じたのです。
訳も分からず手持ちの紋章の属性に流されて、法と混沌の手駒にされてしまう者(2主、ジョウイ)も居れば、己の強い意志と利害の一致で陣営を選ぶ者(シエラ、3ルック、ユーバー)も居るって事ですかね〜。
そうじゃないと、2とか明らかに混沌のユーバーと法っぽいジョウイが一緒に戦ってるのが変な事に。
ひとつの紋章を二人で宿してると明言されたレックとウィンディ様あたりも特におかしい事になっちゃいます。[1]SUIKODEN REVIVAL MOVEMENT村山吉隆コミュニティインタビュー /2016

2)剣と盾

紋章世界の「法と混沌」は、それぞれ「法=剣」「混沌=盾」の象徴が与えられています。[2]3漫画版5巻冒頭ユーバーのモノローグなどで確認済み
これにより〈始まりの紋章〉の片割れである〈輝く盾の紋章〉は混沌に、〈黒き刃の紋章〉は法に属している事が分かります。
ですがここで、ひとつの疑問が浮かび上がってきます。
エタチャでは混沌の神々は「剣の騎士」「剣の王」などと呼ばれていて、盾ではなく剣がシンボルなんです。
まだ読破していないので断定は出来ないのですが、法も剣の要素はなさそうです。(武器の代表的な形も、杖)
困ったことに、幻水の剣と盾の立ち位置とは似ても似つかないではありませんか。
そこで考えられるのは、エタチャでは混沌だった剣モチーフを法へと移動させて、さらに中国故事の矛と楯の思想を取り入れる事で、幻水オリジナルの「法=剣」「混沌=盾」という図式を作り出したのではないか?という事。
この逆転配置が意図的に作り出されたものならば、この後に続く属性や真の紋章の分類にとっても、重要なヒントになりそうです。

3)闇と光

光と闇の属性と聞くと、多くは昨今のFFの影響などもあって「法が光で混沌が闇でしょ?」と答えると思います。
漠然とですが私自身も、混沌は攻撃的で法は保守的なイメージがあったので、以前はそう思っていました。
しかし先に結論を書いてしまうと、幻水においては「法=闇」「混沌=光」なんだと思われます。
『2)剣と盾』では、「法=剣」「混沌=盾」であると書きました。
それを踏まえて〈始まりの紋章〉の二相を見ると、「輝く」盾と「黒き」刃という思わせぶりな形容詞が付いているのが、一目で分かると思います。
実際のゲームでの性能も、〈輝く盾〉は回復も出来て、2主は聖属性の破魔が得意です。
一方の〈黒き刃〉は、見るからに禍々しい強力な攻撃魔法ばかり。
性能・演出ともに、意図的に光と闇に振り分けられていることが読み取れます。

4)真の紋章は、法と混沌のどちらに属しているのか

これまでの考察で導き出された「法=闇=剣」「混沌=光=盾」という図式。
これらを踏まえると、今までは法則性が見いだせずに頭を悩ませていた真の紋章の分類にも、少しだけ納得できる部分も出てくるような気がします。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-10-12-22-53-01(1998 幻想水滸伝2/ED)
なお27の真の紋章がどちらに何個属するのかについては、この2のEDに出てくる壁画がヒントになりそうです。
紋章世界の昼と夜を表したと思われる円の外周に、27の白い点があるんですが、これは真の紋章を表しているのではないでしょうか。
だとすれば昼にかかっている13の点が混沌の真紋で、夜にかかっている13の点が法の真紋なのかもしれません。
0時の所にある両方にかかっている点は〈始まりの紋章〉っぽい。
(これは交流のあるお知り合いの管理人さんに教えていただきました。ありがとうございます)

4−1)太陽と夜

太陽と夜については、2OP冒頭の目を閉じてアップのジョウイ2主の背景にある、壁画イラストがが参考になるかと。
頂上に片目を閉じた太陽?があり、両隣に月と両目を開けた太陽。
更に円を描くかたちで下ると、一番下に剣と盾。
太陽が形を変えた先に盾が。月の先に剣があります。

表現方法から察するに、元々はひとつだった太陽と月が分離した末に剣と盾にメタモルフォーゼしたことを表していると受け取れます。
なので盾が混沌なら太陽も、剣が法なら夜(月?)も、ということになるかと。

しかしこの壁画風イラスト自体は、「太陽と月から剣と盾が生まれたこと」を伝えるものというよりも、2のストーリーの裏に存在する始まりの紋章の説明を抽象的に表したイラストって感じかもしれませんね。

 

4−2)ソウルイーター

最初は思いっきりストームブリンガーがモデルっぽいので、問答無用で混沌だと思ってました。[3]エターナルチャンピオンに登場するエルリックが所有する魔剣「ストームブリンガー」は、混沌の剣。
しかし今は、幻水においては属性や象徴の逆転が起こっている事を知って考えが変わってきています。
闇の紋章の上位だと名言されているソウルイーターは、法に属していてもおかしくないからです。
むしろ同じ闇属性の夜や月が法っぽいのを見ると、ソウルイーターも法だと言われた方がしっくりくるんですよね。

ちなみに罰は、ソウルイーターと性質が似ているので法じゃないかなと思ってます。
『罰』という概念自体が、人の生み出した秩序でもありますし。

 

3−3)他

八房は所有者のユーバーがカオスの化身だそうなので混沌だろうなあ…

月は天体組では夜と同類だろうし、闇属性だし壁画の件もあるし、法っぽいんだよなあ…

五行は物語の書き手次第でどちらにも成りうるけど、法が重力や空間も司っているならそこにこじつけられるんじゃないかなあと。
生き物に内包される要素ではないし…円の継承者のヒクサクのクローンが宿してるしなあ。でもなあ。

変化は名前からして混沌一択

まとめると、私の中ではこんな感じになりつつあります
法 /黒き刃(始まり)、夜、円、月、罰、ソウルイーター
混沌/輝く盾(始まり)、太陽、八房、変化

4)まとめ

ぶっちゃけ1の時はそこまで設定を作り込んでなかったんだと思います。
何かのインタビューで、1の頃は続編を考えるほどの余裕はなかったって言ってた気がしますし。
2主とジョウイの関係のモチーフにした項羽と劉邦も、項羽の2面性をルカとジョウイに分けてたりしていたり一手間を加えていますし、村山さんはインスパイアを得た要素をそのまま持ってくるのではなく、反転や分割といったアレンジを加えて作品に取り入れていますよね。
元ネタから幻水の設定を深読みしようとするファンを嘲笑うかのような、大胆なアレンジの数々です。
世の王道を謳った作品では、法は光であり、正義(弱い者を守る盾)。
対して混沌は闇であり、悪(暴力性)として描かれているものが多いと感じます。
しかし幻水には、それに当て嵌まらないようです。
正しさの是非を簡単に決める事は出来ないとキャラクターが口にする。
絶対的な悪は存在せず、信念と葛藤を持った人間くさい敵がいる。
そもそも、ならず者たちが集い悪政と戦う水滸伝をモチーフに選んでいる。
勧善懲悪ではない、そんなくせの強い物語に惹かれたのだから、設定の複雑さに頭を抱えて何年もあーだこーだ言うのも、一興と言えるのかもしれません。
つまり考えれば考えるほど、生みの親のM山さんが仰られている通り「何でもアリ」のちゃんぽん状態で、設定に本当に法則性があるのかすらもう分から〜ん!って、なってたんですが。エタチャ読んでからは私ですらここまで妄想が捗ったので、皆もっとエタチャよもうぜ!ってことをお伝えして終わりたいと思います。

最後に、考えをまとめるにあたって話を聞いてくださったロクさんに感謝を。
暑苦しい考察を聞いてくれたり、新しい発見を教えてくれたりしました。
お邪魔して書かせて頂いた考察も、今回いくつかこちらに再掲しました。ありがとうございます!

References

References
1 SUIKODEN REVIVAL MOVEMENT村山吉隆コミュニティインタビュー /2016
2 3漫画版5巻冒頭ユーバーのモノローグなどで確認済み
3 エターナルチャンピオンに登場するエルリックが所有する魔剣「ストームブリンガー」は、混沌の剣。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です